干からびていく渓谷と海、そして湖…

イングリスの環境監視部隊員だったバルビーは、戦争によって汚染されていく大自然を見るたびに悲しみに浸った。汚染調査任務でアルビオンの外に出ると、イングリスの川が一つずつ消えていた。日の沈まない白夜の渓谷は今や峡谷と呼ばれており、木霊の平野はバルガスによるカイパーの採掘で沼地と化してかなり時間が経っている…このままでは、戦争に勝利しても人類が安心して生きていく環境が残っているか疑問になるほどだった。そのせいだろうか？バルビーはベスパーズ山林地で発見した輝く湖を「最後のエメラルド」と呼び、この小さな希望だけは必ず守り抜くと決心した。ここを動植物の巣にして、イングリスの生態系復元すること…バルビーにとって最後のエメラルドはまさに最後の希望だった。

しかし、こんな時期の希望は壊れやすい宝石も同然だ。ある日湖を見つめていたバルビーは、ベスパーズ山林地に進出した真理の教団に出くわしてしまう…当時高度な軍事訓練を修了したバルビーはバルガスと戦いながら継承者の部隊支援を要請したが、現場にアルケー空間移動装置がなかったため、支援が遅れてしまった。結局バルビー一人で湖を守るしかなかった。しかし、非継承者にとってバルガスは最下級の個体すら敵わない相手だ。バルビーは無惨に攻撃された末に湖に投げられてしまった。

そうやって水の中に沈んでいたバルビーは思った。少なくとも自分はエメラルドの中で最期を迎えるかもしれないと…わずかながらも希望を夢見ることができたありがたい湖だった…意識が遠のいていくなか、バルビーは生きようともがく生存本能を抑え切れなかった。もう一度戦いたい、この湖を守りたい、いや…すべてのバルガスを呑み込む巨大な海になりたい…

そのとき湖の中央から大きな荒波が立ち、周辺を焦土と化した。敵は巨大な水圧に押しつぶされて跡形もなく消えてしまい、湖があったところには人間の姿をした水しぶきが激しく揺れていた。その存在の正体はバルビーだった。彼女は生の果てでアルケーを覚醒し、その能力で水と融合して終わりなき遊泳をするようになった…最後のエメラルド、そのものになっていた。

アルケー能力によりいつどこででも水になれるバルビーは、水の性質に起因する特有の弱点を持っている。時間が経過すると、水分が蒸発して形状を保てなくなるのだ。バルビーの専用スーツはこの弱点を補うために作られた環境遮蔽服である。バルビーが人間の姿を保てるよう、アルケーと水素の結合をサポートするだけでなく、アルケーとともに分解・再結合できる形状記憶技術が適用され、多彩な戦術能力を提供する。

『性能はいいけど…結局、このスーツは私の金魚鉢のようなものよ』
- バルビー