アルティメット継承者プロジェクトとは、イングリス各地で発見されている先覚者の技術や装備、または特殊なアルケー遺伝子を現役継承者の特性に合わせて改良して適用する計画のことだ。究極の目標は、すべての継承者を人類の先代、先覚者の姿に強化させること。

しかし先覚者すら持っていなかった、圧倒的かつ悲劇的なアルケー能力をどうやって強化すればいいのだろう？バルガスの生体実験により能力を獲得したグライには、公式であれ非公式であれ、自分に合ったアルティメット装備がなかったのだ。そのため、マジスターはグライのためのアルティメットプロジェクトを中断しようとした。そのとき本当に中断していれば、アルビオンで流血沙汰が発生したかもしれない。いなくなった娘のダイアを探すために、もっと強力な力を欲していたグライはアルティメットプロジェクトに大きな期待を寄せていたのだ。

命を脅かされたマジスターは、昼夜を問わず研究して既存のアルティメット装備の特性を分析し始めた。特に、放出系アルケー能力に特化したビエッサーのアルティメット装備は、グライの装備開発の大きなヒントとなった。放出に特化した能力を逆に設計して｢吸収｣に特化させることができれば、グライに最もふさわしい装備となるからだ｡

ついに研究は成功した｡マジスターたちは生き延び、グライは期待以上の強力なアルティメット装備を手にすることができた｡実のところ、グライが期待していた性能はこれほど強力なものではなかった｡目の前に見えるすべてのバルガスを一瞬で掃討して娘を無事抱きしめるくらいの生存性さえ保証できるなら、悲しみに暮れている母として満足できだだろう。

ビエッサーの放出系アルケー能力強化服の仕組みを反転させて設計した装備。文字通り放出とは逆の吸収能力を強化し、グライ特有の戦闘技術を飛躍的に引き上げる。ヘルメット部はオリジナルの設計をそのまま適用する計画だったが、グライの要望に従って顔面部を改造し、防護性能の一部と引き換えに特殊な用途を達成した。

『ダイアが私の目を見れば…きっと母親だって分かってくれるはずよ』
- グライ