アルティメット継承者プロジェクトは、イングリス各地で発見された先覚者の技術や装備、あるいは特殊なアルケー遺伝子を現役継承者の特性に合わせて改良し、適用する計画のことを意味する。最終的な目標は、すべての継承者をかつて強大だった人類の前代、すなわち先覚者の姿に強化することである。

筆すべきは、フレイナのアルティメットプロジェクトは、本人の知らないうちに進行していたということである。公式にはフレイナ自身がプロジェクトを拒否したとされていた。しかし彼女の心理分析によると、フレイナは強くなるほどオニールを救えなかった無力さを思い出し、成長するたびに自己嫌悪と事件のトラウマを強く感じて作戦に支障をきたすほど精神的に追い詰められていた。

フレイナの戦友であり指揮官でもあったシャレンは、その姿を見過ごすことができなかった。なんらの手立ても見いだせなかったシャレンは、フレイナに投与されていた毒性中和剤に神経遮断成分を加えることまで考えていた。だがその場合、中和剤が変質し、フレイナの命が危険にさらされる可能性があり、この化学反応を防ぐためには、毒性濾過装置など専用装備のアップグレードが急務であった。フレイナがこの状況を乗り越えるには、どうしてもアルティメットプロジェクトが必要だった。

そのとき、17号からかつて「0号室事件」を引き起こした首謀者が、先覚者の装備を身体に移植し、肉体の腐敗を抑えているという情報が入った。マジスター議会は、その先覚者の装備を用いてフレイナのアルティメットプロジェクトを研究し、化学反応に敏感なアルケーの毒性さえも制御できる新たな装備の開発を見込んでいた。

一方でシャレンがその情報に注目したのは、バルガスが移植したという装備ではなく、首謀者が再び姿を現したという事実だった。0号室事件はフレイナが継承者となった理由と原因であり、彼女を悪夢の中に縛り付ける解けない錨のようなものだった。その事件の元凶をフレイナ自身の手で終わらせ、その宿命の鎖を自ら断ち切ることができれば…錨がいつか沈み、フレイナは水面に浮かび上がることができるだろう。シャレンは神経遮断成分の使用を悩むのではなく、フレイナが過去に溺れぬように助けることを優先すべきだと考えた。

そのため、0号はマジスター議会と司令部の命令を無視し、独断でフレイナにターゲットの暗殺を指示した。フレイナは苦しい過去と向き合いながらミッションを遂行するしかなかったが、そうして得た先覚者の腐敗抑制装置はフレイナのアルティメットプロジェクトを完成させ、作戦の過程でフレイナ自身も虚無の海に縛られていた古い錨の鎖を、自らの手で断ち切ることができた。

このように、フレイナのアルティメットプロジェクトは本人の知らないうちに進行し、彼女自身も知らない新たな力を与えた。それは精神を制御する薬物を用いた強化ではなく、傷を受け入れ、前に進むための新たなきっかけだった。

このアルティメット装備は、ビエッサーのアルティメット装備「絶対零度」をベースに改造された
放出系アルケーの使用者に特化した強化スーツである。この装備は一見、ただの絶対零度のバリエーションタイプに過ぎないと思われるかもしれない。しかし、このアルティメットプロジェクトの真価は、フレイナ専用に作られた特製の重化学毒性濾過装置にある。

元々フレイナが装備していた従来の濾過装置は、化学成分の制御や分配機能に限界を迎えている状態だった。そのため、フレイナはアルケーが強力になるほど身体に負担を感じており、理論的にフレイナが生き延びるにはアルケーの成長を止めるしかないという致命的な限界があった。しかし、先覚者の技術が適用された濾過装置の助けを借り、フレイナは毒性アルケーの化学式を瞬時に思うがまま変更し、放出できるほどの圧倒的な力を手に入れた。この性能的余裕は、トラウマに向き合う彼女の心にも変化をもたらした。まさに敵の悪夢と自らの悪夢を一挙に掌握した、悪夢の支配者となったのだ。

『生きるんだ…フレイナ…愛してるよ』
- オニール、特務隊第9号隊員